うつわへの思いやり
ginkalogo
HOME 
 

器を使う方へ「思いやり」のお願い
器は使う人が。心豊に暮らす道具として作られたものです。
だから、使われてこそ作られた意味を持ちます。
ものである以上使うことで、必ず消耗はしていくでしょう。
ただ、使う人のちょっとした優しさ一つで、器の寿命が延びるだけでなく、
使われてこそ完成する器の美しさを、見ることも出来ます。

やきものへの思いやり
 ●思いやり1 水にくぐらす  
やきものは、特に土ものは、(出来ることなら石ものでも)
使う前に、水やお湯に十分にくぐらせて下さい。
そうしていただくだけで、冷たいものは冷たく、
暖かいものは暖かく食べることが出来るだけでなく、
お茶や汁を注いだり、盛り付ける前に、素地に水がしみ込ませておくことで、
器も急に汚れにくなり、使っていただくほどに、
侘びた美しさに変わっていくことでしょう。

近年やたらと使い始めは煮るということを推奨することが書いてあるのを見かけます。
あえて言わせていただければ、必要ないと思っています。
丈夫になるとも言われていますが全く確証がありません。
煮て頂いても、変わることのないやきものを選んで欲しいと思います
思いやりを持って変わる様を楽しむのが陶器やせっ器であり、
変わらず美しいのが磁器という、それぞれの持ち味であり美しさだと思います。

 ●思いやり2 種類と堅さを知る
器に使われるやきものは、性質で大きくわけて三つに分けられます。
土ものといわれる陶器とせっ器、石ものともいわれる磁器との三つです。
陶器、せっ器、磁器の順に堅く、素地が緻密になり、
吸水性が少なくなります。

洗うときや重ねて収納するとき、添える匙や箸を選ぶとき、
器に急に熱を加えたり急冷するときなど、
三種類のやきもののがおおよそでも判別でき、
性質がわかると扱いも自然と変わることでしょう。
ただ細かく分ければ、石ものと土ものの中間のような半磁器や、
無釉の多いせっ器の素地に釉薬が掛かっているものなどがあり、
少しややこしくなりますし、あいまいなやきものもありますから、
大まかでも、わかれば十分です。
それでも、ご自分の持っていらしゃるやきものの、
堅さや素地の緻密度合の順位が付けられるといいですね。

 ●思いやり3 熱に強くて弱い
やきものは熱には強いのですが急激な温度差には、案外弱いのです。
その意味で通常のやきものは、直火に掛けられません。
直火ではないのですが、温度差の出来やすい電子レンジも、
理屈状は、運が悪いとアクシデントが発生しないとはいえません。
といいながら、40年近く電子レンジで手作りの器を、
バンバン使ってしまっていますが、
じつは未だ、破損などの事故にあったことはありません。
まして、近年の電子レンジの発達からなおのことなのではないでしょうか。
一方、やきものは熱には強いのでゆっくり熱くなるオーブンや、
蒸し器や湯煎には、問題なく使えます。
熱くするのとは逆になりますが、
熱くなったものを冷凍庫などで急激に冷やしたり、
熱い状態の器をにれたふきんなどでつかんだり、
水に浸けたりするのは、急激な温度差を与えないという、
同じ理由でなるべく避けるように心掛けましょう。

 ●思いやり4 水道水には注意
水との相性は良いのですが水道水にはご注意。
鉢やボールなどの器は、花器にしたりと、
料理以外にも積極的にお使いいただきたいのですが、
草花を生けて水を張った時など、
水の取り換えはこまめにしてください。
くれぐれも、忘れてそのままにしないようにしましょう。
特に夏には気をつけて下さい。
蒸発した水道水に含まれていた塩素が結晶になって、、
器の表面にこびりついてしまいます。
この塩素の結晶は、一筋縄ではとれません。
しかも、器の表面の色によっては、大変に目立って美しくなく、
器を台なしにしてしまいます。
 
(この塩素の問題はガラスでも同じ注意が必要です。)

 ●思いやり5 洗い方
やきものの破損のほとんどが落としたりするのではなく、
洗うときになどに、気づかずチップしてしまうようです。
ほとんどの方が使っていらっしゃるの水切り籠は、
ステンレス線を組み合わせたもののようです。
ここに洗い終わったお皿を立てるとします。
もし、1センチも上から手を放したとすると、
お皿の縁をナイフでたたくのと同じようだと思って下さい。
細く丸いステンレス線とお皿が当たるのは、円と円の接点ですから、
点と考えていいような小さな部分です。
それにお皿の重さと落とされたためのスピードを換算すれば、
ぶつかる部分にかかる力はとても大きな衝撃です。
好きな器を洗うときや、来客時など忙しい時は、
洗い籠にタオルを敷くと良いですよ。
立てて置くときは特に少し優しく置きましょう。
 
沢山の器のなかから選らびだされ、
せっかく手に入れたお気に入りの器ですから、
それぞれの工夫できっと大切にして下さっていると思います。
それでも、豊になったり、暮らし方が変わって来たために、
私たちが忘れてしまっている、先人達の器の使い方や、
思いやりの工夫を見直してみるのも、案外参考になります。

器には優しい竹の洗い籠や木の洗い桶が、使いやすいプラスチックに、
あるいはステンレスに変わっていったのですから、
洗い方や意識も変わらないといけないのでしょう。
あまり見掛けなくなった茶ビツも、急須やせん茶碗を、
嗜好品の道具ととらえて、食器とは別のタイミングで洗うことで、
欠けやすい突起の多い急須への思いやりだったのでしょう。
それに、お茶器は香りに気遣う器ですから、
すすぐ程度が慣例のもの、洗剤などはじめから冒頭にないものです。
いわば、お米を洗剤で洗うようなものではないかな。

器への思いやりをいくつか並べてはみましたが、
ほとんどが極く当たり前のことなので、
もう既に心がけていただいていることかもしれません。
ただ、意識として改めて、心にとどめてください。

これらは、ルールではありません。
お気に入りの器を使う、思いやりです。


漆器への思いやり
漆器を手に入れた時は、普通なら漆器は乾いたものですから特に特別に神経質にならなくても平気なはずです。
洗うときは柔らかなスポンジや布で洗いましょう。
汚れは中性洗剤で洗い、水か湯でよく濯ぎましょう。
漆は塗り上がって漆器になって乾いた状態から、約半年ぐらいの間に、透けると言う現象がみれます。
とくに、木地が見える塗り方のスリ漆や拭き漆や、木地呂などは、塗りたては黒っぽく木地が見えなかったものが、だんだん漆が透明感を増していって、木目が見えてきます。これを透けるといっています。同時に漆の肌も塗りたては柔らかくこの期間でぐーんと締まり強くなります。
その意味では、半年は赤ちゃん扱いしていただけるといいと思います。たとえば椀などは、貝類の具を我慢して方が賢明です。貝の殻は固いので、箸でかき回しているうちに、運が悪いと欠けた貝の殻の部分などで、擦り傷を作りやすいことになります。
半年以降はだんだんと、塗膜面がしまってきますから、特に気にする必要がなくなってきます。
漆器は熱にも強いですし。使うとき、洗うときに硬いものと喧嘩しなければ、何の心配もありません。
 たとえば、金属の匙やフォークなどを使うことや、洗ってメやきしめモのざっくりしたやきものに重ねておいたりするのは、避けましょう。洗った後に良く拭けば色艶をどんどん増して行きます。
 仕舞い方は、とくに難しくはありません。使う頻度によっていろいろでしょう。
おみそ汁の椀などのように、毎日使うようなら、食器だなにそのまま他の食器と一緒にしまって良いと思います。ただ、重ねる時に出し入れでこすり傷が付かない工夫は必要でしょう。ザクザクした肌のやきものなど直ぐ隣でない方がいいですよね。日が射し込む食器棚も、紫外線に硬化していくので避けてください。
 長くしまうなら、和紙や柔らかい紙、または布で包んでしまいましょう。出し入れで落としたり傷が付くアクシデントがないように、箱に入れるのも優しい選択です。
仕舞う場所は、出来れば温湿度の安定したところがよいでしょう。漆器は中身が木であることをイメージしておいてください。反ったり歪みそうな条件の所は避けてください基本的には、人がいられる場所なら、問題はありません。
 万が一、落としたりした事故で壊れたり、あるいは使っていて、何か故障が起きたときは、なるべく早く、手に入れたところや作り手に相談して、必要なら補修や修理をしてもらいましょう。全てが治るわけでも、元通りに修理出来るわけではないですし、補修後の色合いも、変わることもあるでしょう。それでも塗装の範囲なら、かなりの修復が可能です。手間のかかる仕事になることなので、内容によっては有料になるでしょうが、。その時はお使いになる方の、採算性や思い入れとの判断でしょう。


homeへ戻る